太古の地球がひとつだった時代、「ゴンドワナ大陸」と呼ばれる巨大な陸地が存在していました。
その名を受け継ぐ「ゴンドワナ雨林(ゴンドワナ多雨林群)」は、オーストラリア東部に広がる世界遺産であり、今もなお恐竜時代の植物や動物たちが息づいています。まるでジュラシック・パークのような神秘的な森は、地球の進化の歴史を今に伝える“生きた博物館”。
この記事では、「ゴンドワナ雨林」の成り立ちやその魅力、そこに息づく生き物たち、そして日本とのつながりまでを、わかりやすくご紹介します。

以下のようなあなたにオススメです!
- テレビ番組で「ゴンドワナ雨林」に興味を持った人
- 世界遺産や自然が好きな人
- 地理や歴史はあまり得意じゃないけど、ロマンは大好きな人
アイキャッチ写真:Image by Dunhill from photoAC
ゴンドワナ雨林とは?|まずはざっくり知りたい人へ
ゴンドワナ雨林とは、オーストラリア東部に広がる広大な熱帯・亜熱帯の森のことを指します。
世界遺産としては、1986年に「オーストラリア東海岸の温帯および亜熱帯雨林公園」(Australian East Coast Temperate and Subtropical Rainforest Park)の名称で登録され、1994年の登録地域拡大にともなって「オーストラリアの中東部の多雨林保護区群」(Central Eastern Rainforest Reserves (Australia)に変更。さらに2007年に現在の登録名称・「オーストラリアのゴンドワナ雨林群(Gondwana Rainforests of Australia)」として登録されました。
この雨林は、クイーンズランド州とニューサウスウェールズ州にまたがる約50以上の国立公園や保護地域によって構成されており、総面積は36万6507ヘクタール(およそ3665平方キロメートル)にも及びます。
「雨林(レインフォレスト)」とは、その名のとおり、年間を通して雨が多く降る地域に発達した森のこと。豊かな雨と温暖な気候に恵まれ、シダや巨大なナンヨウスギ、コケ類など、みずみずしい植物たちが生い茂っています。
この地域は、ただの自然公園ではありません。数億年前の地球に存在した「ゴンドワナ大陸」由来の植物や地形が、奇跡的に現代にまで残されている、まさに“生きた化石の森”ともいえる場所なのです。
名前の由来|「ゴンドワナ」ってなに?
「ゴンドワナ雨林」という名前の“ゴンドワナ”は、じつは約5億年前に存在していた超大陸「ゴンドワナ大陸」にちなんだもの。
このゴンドワナ大陸には、現在の南アメリカ、アフリカ、南極、インド、オーストラリアなどが、ひとつにまとまって存在していました。
やがて地球の大陸移動によって分かれ、現在のような大陸の形になったのです。
そんな太古の時代から、オーストラリアの一部にはゴンドワナ大陸の面影を残す自然環境が奇跡的に残されました。なかでも、このゴンドワナ雨林には、当時から続く原始的な植物や地形が今も生き続けているのです。
まるで、地球の記憶をそっと抱きしめているような森。それが「ゴンドワナ雨林」と呼ばれる理由なのです。
🌱 すべての大陸が一つにくっついていた時代もあった!
ゴンドワナ大陸の前には、一つの大きな大陸「パンゲア(Pangaea:ギリシャ語で”全ての大地”)」があったと考えられています。
パンゲア大陸(全大陸が1つだった!)
↓ 分裂
ゴンドワナ大陸(南半球側)
+
ローラシア大陸(北半球側)
↓ さらに分裂・移動
今のアジア、アフリカ、南アメリカ、オーストラリアなどに!



パンゲアの前にも「ロディニア」「コロンビア」「ノウナ」なんていう超大陸があったといわれているそうです
なぜ世界遺産に?|ゴンドワナ雨林の価値
ゴンドワナ雨林が世界遺産に登録された理由は、ただ美しい森だから…ではありません。その本当の価値は、地球の進化と生命の歴史を物語る“生きた博物館”であることにあります。
この森には、2億年以上前から姿を変えていない原始的な植物や動物たちが今も息づいています。そのなかには、ほかの場所ではほとんど見られないような絶滅危惧種や固有種も多く、貴重な生態系を守る“最後の砦”ともいえる存在なのです。
さらに、火山活動によって生まれたドラマティックな地形や滝、渓谷など、自然がつくり出した景観美も見逃せません。これらの複合的な価値が認められ、1986年にユネスコの世界遺産として登録されました。
「自然の美しさ」と「太古の生命の記憶」が共存する、まさに奇跡の森。それが、ゴンドワナ雨林なのです。
ゴンドワナ雨林で見られるもの|まるでジュラシック・パーク?
ゴンドワナ雨林には、まるで恐竜時代にタイムスリップしたような原始的な植物や動物たちがたくさん暮らしています。ここは、熱帯と温帯の雨林が入り混じった、非常にユニークな生態系だといいます。
この森はまさに、“ジュラシック・パーク”のような場所。「かつての地球」の姿を今に伝える生き物たちに出会えるのが、ゴンドワナ雨林の最大の魅力です。
ゴンドワナ雨林で見ることのできる主な動植物には、以下のような種類があります。
🌱 原始の植物たち


- シダ植物(Ferns):地面を覆うように広がる、ジュラ紀からの生き残り。
- ナンヨウスギ(Araucaria spp.):ゴツゴツした幹ととがった葉が特徴の針葉樹。例:ブンヤマツ(Araucaria bidwillii/Bunya Pine)
- ノトファガス属(Nothofagus spp.):ゴンドワナ大陸を起源とするブナの仲間。
- カヤツリグサやコケ植物(Sedges, Mosses):湿潤な環境を彩る名脇役たち。
🐦 珍しい鳥たち


- カソワリ(Cassowary/Casuarius casuarius):恐竜のような風貌を持つ大型鳥。攻撃力も強い。
- スーパーブ・ライフルバード(Superb lyrebird/Menura novaehollandiae):鳴きまね名人。カメラのシャッター音もコピー!
- アルバトロスの仲間(Albatross/Diomedeidae):海岸部にも飛来。
- グリーン・カテドゥーリグ(Green catbird/Ailuroedus crassirostris):ミャーミャー鳴く不思議な鳥。
🦎 両生類・爬虫類


- マウンテン・イエロースポッテッド・ツリーフロッグ(Litoria citropa):樹上で暮らすカエル。黄色の斑点が特徴。
- メアリー川カメ(Mary River Turtle/Elusor macrurus):モヒカンみたいな藻が生える、希少な淡水ガメ。
- イースタン・ウォーター・ドラゴン(Intellagama lesueurii):水辺に生息する大型トカゲ。
🐞 昆虫


- リーフ・インセクト(Leaf Insect/Phylliidae):葉そっくりの擬態名人。
- ジャイアント・バージン・スティックインセクト(Giant stick insect/Ctenomorpha gargantua):体長30cmを超えることも!
🌱 日本にもある?”ゴンドワナの名残り”
ゴンドワナ雨林の動植物と日本の自然は、直接の“つながり”は少ないけど、進化の歴史の中では兄弟やいとこみたいな関係。とくに植物は地球全体に広がっていった名残が、いまも森の中に見つけられます。



シダ植物やナナフシに、ゴンドワナの名残を感じられる気がします
ゴンドワナの面影を今に感じる|他にもある“ゴンドワナの記憶”
ゴンドワナ雨林が存在するのはオーストラリアだけではありません。
かつて「ゴンドワナ大陸」の一部だった南アメリカ、アフリカ、インドなどにも、共通の植物や化石が見つかっています。これは、大昔に地球の大陸がひとつにつながっていたことを示す貴重な証拠です。
たとえば、南アメリカとアフリカには、オーストラリアのナンヨウスギに似た植物や、同じようなシダ類が今も生息しています。さらに、化石記録をたどると、ゴンドワナ大陸全体に広がっていたと考えられる恐竜や原始的な植物の痕跡が、各地で発見されています。
このような「地球規模のつながり」は、プレートテクトニクスや大陸移動説のロマンを感じさせてくれる話題です。私たちが住むこの地球が、かつてひとつの“超大陸”だったことを思うと、不思議でワクワクしてきますよね。
ゴンドワナ雨林はただの美しい森ではなく、太古からの地球の記憶を今に伝える“生きた証拠”でもあるのです。
まとめ
ゴンドワナ雨林は、単なる自然の宝庫ではなく、地球の壮大な歴史や大陸移動のロマンを感じさせてくれる場所です。今もなお残る原始的な植物や貴重な動物たちは、かつて地球がひとつだったという証を静かに語りかけてくれます。
オーストラリアの森に広がるこの世界遺産を知ることで、私たちの身近な自然にも新たな目を向けたくなるかもしれません。
太古の記憶が息づくこの場所に、想像をめぐらせてみませんか?



もっと視野を広げて、超大陸について調べてみるのもきっと楽しい🎵
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